シーン202:「継ぐ」

お当番 : りょーじ

 2012年12月5日、歌舞伎界を第一線で引っ張り、現代劇でも積極的に公演をなさった 中村勘三郎さんが亡くなられました。また2012年11月10日、「日本の母」として親しまれ お芝居の世界を引っ張ってきた森光子さんが亡くなられました。2012年はその他にも 多くの名優の皆様が亡くなられた年となりました。甚だ出過ぎた真似だとも思いながら、 お芝居に関わる者の一人として、謹んでご冥福をお祈りいたします。

 中村勘三郎さんは、野田秀樹さんの作品『表に出ろいっ!』で「お父ちゃま」を 演じていらっしゃいました。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、これは劇団シブパ 第16回公演で、私も演じさせていただいた役です。
 役作りの考え方はいろいろありましょうが、私は極力、元となるお芝居や 同じ演目をする他劇団さんの公演がある場合はそれを観るようにしています。 自分の演じ方が元のそれに引っ張られてしまい「どこかで観たことのある、 オリジナリティに欠ける形に仕上がってしまう」という恐れはありますが、 それを観ておかないと「すでにその芝居を観たことのあるお客様の期待に沿えない」 または「オリジナルの作品を超える仕上がりにできない」という思いがあるためです。
 そのような理由から、「お父ちゃま」を演じるにあたり勘三郎さんが演じられている 『表に出ろいっ!』のDVDを観ました。年齢を感じさせないそのパワフルな演技に 度肝を抜かれたとともに、「こんなにも人を魅了する演技をしてみたい!」と 憧れを抱きました。無論、自分が演じた「お父ちゃま」など勘三郎さんのそれの 足元にも及ばない出来栄えだった訳ですが…。

 ともあれ、勘三郎さんを演技の上での「師匠」の一人、と勝手に考えている自分が いつしかいました。そんな勘三郎さんの死…。言葉にはできない思いがありました。

 私は演劇で食べてはいませんので、演劇に携わる時間も想いも、職としている方に 遠く及ばないことは重々承知しております。けれども、やっぱり偉そうなことを 言うようだけれど、敢えて言いたい。

 勘三郎さん、ありがとう。
 形は違えど、お客様を喜ばせられる芝居を創り続けたいと思います。


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