シーン269:「時間は未来から過去へ、そしてまた未来へ……」

お当番 : 沢村 希利子


最近、「20年」という時間を感じる出来事がいくつかありました。

デビューから20年以上ずっと好きだったアーティストの最近の動向を知ることができ、 思いきってライブの予約をしてみたり。
今はメジャーシーンにいない方なので、まだ活動していることがわかってとても嬉しくなりました。

ライブも、人が多い場所でたくさん動くと体調が悪くなるなど、 体質的に合わないので、20年ぶりくらいです。

それから、高校生の時からずっと変えていなかった髪型を変えてみたり。
前髪を切っただけなんですけど。

20年前から色々と時間が止まったままだったんだなー、と実感。

そして、20年前から数年ごとに会いに来てくれる、大切な人との再開。
自分ですらまとまらない私の感情に、導くように的確な言葉をくれる人です。

その人が、面白いことを言っていました。

「過去があるから今があるんじゃないよ。逆。 今があるから過去があって、未来があるから今がある。時間は未来から過去へ流れるんだ」

自分のイメージする未来というものが、時間の先にすでに存在していて、 その未来から様々な信号が送られてくるのだそうです。
その中から、自分のニーズに合った信号だけをキャッチすればいい。

だけど時には妨害電波もたくさんあって、それは自分の内側から発信されたり、他人から発信されたり。

自分の内側からの妨害電波は、未来ではなく過去から送られてくるもので、 過去の痛みを再現して膨らませて未来への不安感にしてしまう、いわゆるマイナス思考というものです。

「だけどそれはただのノイズなんだよ」

とその人は言います。

人間は種の本能として、基本的にマイナス思考なんだそうです。
だから良い記憶よりも悪い記憶の方が強烈で鮮明に残るのです。

それをうまく処理できないと、痛みだけが潜在意識に残って自分をひたすら否定し、 責め続ける、妨害電波となってしまいます。
だけど今はもう「あの時」ではないし、「あの時」と違う行動をした自分など、 この世界のどこにもいないんです。

だからそれはただの雑音。ノイズ。

「人間は1日6万回も物を考えるんだって。 起きて意識がある限り、延々と何かを考え続けてるってことだよね。 だったらさ、雑音を取り払ってクリアな状態で聞こえる自分の心の声に、集中してみてもいいんじゃない?」

そう言って笑ったその人の空気感こそがクリアで、こういう人になりたいなあ、なんて思ったりして。

先を見据えて行動する、とか、夢を叶えるために今頑張るというのに近いのかな、 と感じたのですが、ちょっと違うんだそうです。

「未来のために今頑張るっていうのは素晴らしい価値観だね。 だけど時間の概念としては過去から未来なんだよね。 未来から過去という時間の概念の中で大切なのは、 過去にも未来にも縛られず、今この瞬間を大切にするということなんだ」

今こうやって一緒に過ごしている人の声に、言葉に耳を傾け、顔を見て、その空気を感じ、 体温を、呼吸を感じ、そして自分自身の心を感じることに集中する。
その中に、望む未来に繋がるものは常にあって、それを自然にキャッチできるのが理想的。

20年。

それはとても長いような、短いような年月。

あの頃望んだ未来に私は辿り着けているのだろうか。
そして20年後、望む未来に辿り着けるのだろうか。

20年後に過去を振り返った時に、 ちゃんと過去に信号を送れていると思える自分になっていたいと思うのです。


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