シーン274:「巨星、逝く。」

お当番 : しんご


あれは1999年のこと。
いわゆる食わず嫌いなのか、単にチケット代が高くて手が出せなかったからなのか、 それまでどちらかと言えば敬遠していた有名演出家の舞台を観に行きました。
渋谷のシアターコクーンでした。
とても素晴らしく、感銘を受ける、奮えさせられる舞台でした。
舞台から発せられる圧倒的な熱量は、初めて経験するものでした。
かなり良席だったこともあり、まともにその熱を浴びていました。
当然、その興奮は観劇後もしばらく続きました。

「人と違うもの、人がやらないものを創りたい」

「リアルにやらなければ響かない」

後年、何かのテレビ番組で氏が語っていました。
画面越しでも熱量が伝わってくる稽古場の風景とともに放送された氏へのインタビュー、 そこで語られていた言葉はとても印象的なものでした。
と同時に、怖い演出家で昔は稽古場で灰皿を投げつけていたというエピソードもあるようですが、
「投げたこともあったかなぁ。今は煙草を吸わなくなったから、投げたくても灰皿がない」
と冗談交じりに話す笑顔も印象的でした。

もっともっと氏の生み出す舞台を観たかった、観ておきたかった。
訃報に接し、心からそう感じました。

日本が世界に誇る演出家 蜷川幸雄氏 のご冥福をお祈りいたします。


back          next